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秋田地方裁判所 昭和47年(わ)71号 判決 1972年11月13日

本籍

大韓民国慶尚南道南海郡二東面萃蔭里一、二七一

住居

秋田県大館市字東台一九五番地の二

会社役員

新井康夫こと

朴碩道

一九二二年二月一四日生

本店所在地

秋田県大館市字大町四二番地

株式会社文化

(右代表者 朴碩道)

本店所在地

同市字長倉町一〇番地

文化産業株式会社

(右代表者 朴碩道)

右被告人朴碩道、被告会社株式会社文化、同文化産業株式会社に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官小川修出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人朴碩道を懲役一〇月に、被告会社株式会社文化を罰金五〇〇万円に、同文化産業株式会社を罰金三〇〇万円に処する。

被告人朴碩道に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告会社株式会社文化は、大館市字大町四二番地に本店を置き、パチンコ遊技場経営等を営業目的とする資本金三、〇〇〇、〇〇〇円の株式会社であり、被告人朴碩道は、同会社の取締役または代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一、山本文和と共謀のうえ、売上の一部を脱漏して簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿し、昭和四三年一〇月一日から同四四年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が一六、八〇〇、九八七円あつたにかかわらず、昭和四四年五月三一日大館市字金坂後三九番地所在の大館税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四、三八〇、〇六三円でこれに対する法人税額は一、四二八、〇〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額五、七七五、〇〇〇円と右申告税額との差額四、三四七、〇〇〇円をほ脱し

二、李敬南、山本文和と共謀のうえ、前同様の方法により所得を秘匿し、昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が四四、一六八、八四六円あつたのにかかわらず、昭和四五年六月一日前記大館税務署長に対し、所得金額が一四、三五六、五四二円でこれに対する法人税額は四、八一四、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額一五、二四八、八〇〇円と右申告税額との差額一〇、四三四、二〇〇円をほ脱し

三、李敬南と共謀のうえ、前同様の方法により所得を秘匿し、昭和四五年四月一日から同四六年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が一五、一二七、四八〇円あつたのにかかわらず、昭和四六年五月三一日前記大館税務署長に対し、所得金額が九九七、三二八円でこれに対する法人税額は二七六、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額五、二九六、六〇〇円と右申告税額との差額五、〇一七、五〇〇円をほ脱し

第二、被告会社文化産業株式会社は、大館市字長倉町一〇番地に本店を置き、パチンコ遊技場経営等を営業目的とする資本金三、〇〇〇、〇〇〇円の株式会社であり、被告人朴碩道は、右会社の代表取締役として、その業務全般を統括していたものであるが、同朴は、李敬南と共謀のうえ、同文化産業株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を脱漏して簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿し

一、昭和四三年四月一日から同四四年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が一一、〇四五、八二七円あつたのにかかわらず、昭和四四年五月三一日前記大館税務署長に対し、所得金額が二、五七〇一三九円でこれに対する法人税額は七一九、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額三、六五五、七〇〇円と右申告税額との差額二、九三六、一〇〇円をほ脱し

二、昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が四二、二一四、一七三円あつたのにかかわらず、昭和四五年五月三一日前記大館税務署長に対し、所得金額が二〇、四二九、七七八円でこれに対する法人税額は六、九四〇、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額一四、五六四、九〇〇円と右申告税額との差額七、六二四、八〇〇円をほ脱し

三、昭和四五年四月一日から同四六年三月三一日までの事業年度において、右会社の実際課税所得金額が四、二九一、九三一円あつたのにかかわらず、昭和四六年五月三一日前記大館税務署長に対し、所得金額が一、六〇八、六四一円でこれに対する法人税額は四五〇、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額一、一一四、四〇〇円と右申告税額との差額八六四、二〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人朴碩道の当公判廷における供述

一、被告人朴碩道の検察官に対する昭和四七年三月一二日付、同月一三日付、同月一四日付(一)各供述調書

一、李敬南の検察官に対する供述調書二通

一、大蔵事務官作成の「株式会社文化と文化産業株式会社の簿外財産調査書」と題する各書面

一、鎌田時蔵作成の大蔵事務官に対する同月二日付上申書二通

一、大蔵事務官作成の鎌田時蔵に対する同月一日付質問てん末書

一、福田兼雄、菅原隆一郎、佐々木和夫、加賀谷兼厳、鎌田持蔵、伊藤久年の検察官に対する各供述調書

一、検察事務官作成の報告書

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告人朴碩道に対する昭和四六年一一月一六日付、同月一九日付、同年一二月一 日付、同月一六日付各質問てん末書

一、被告人朴碩道の大蔵事務官に対する同年一二月一四日付(五通)、同年一七日付、昭和四七年一月二八日付各上申書

一、登記官作成の登記簿謄本(株式会社文化のもの)

一、大蔵事務官作成の告発書(右会社に関するもの)

一、山本文和の検察官に対する同年三月一二日付、同月一四日付各供述調書

一、大蔵事務官作成の伊藤久年(昭和四六年一一月一六日付、同月一七日付、同年一二月一三日付)、伊藤敏子(同年一一月一七日付)、斉藤イチ(同日付)、成田冷子(同月一九日付)、山田武見(同年一〇月一六日付)、相沢辰雄、南重純(二通)、鄭達之、明石弥太郎、高橋哲夫、古家喜厳、伊藤光雄(同月一四日付)、加藤光子(昭和四七年一月二四日付)、伊藤虎太郎、加賀谷兼蔵(二通)、佐々木和夫(昭和四六年一〇月一六日付、昭和四七年三月九日付)、長内正範(同年二月二八日付)、葛西卯一郎に対する各質問てん末書

一、山田武見、三浦正治、福田兼雄、高橋三夫、大塚邦昭、相川栄蔵、菅原隆一郎、高橋孜作成の大蔵事務官に対する各上申書

一、中孝、高橋哲夫の大蔵事務官に対する各上申書

一、大蔵事務官作成の臨検てん末書、「脱税額計算書説明資料(株式会社文化)」、「簿外預金等調査書」、「銀行調査書」、「無尽(南無尽)調査書」、「公訴公課納付額調査書」、「株式等払込金額調査書」、「受取配当金調査書」、「個人関係借入金調査書」、「個人関係預金調査書」、「社長勘定調査書」、「タバコリベート収入調査書」(昭和四七年三月一一日付と題する各書面)

一、国税査察官作成の査察事件調査事績報告書(株式会社文化に関するもの)

一、宮城県警察本部技術吏員作成の昭和四七年二月一八日付鑑定書

一、蔡鴻根、姜熙萬、金仁在の朴碩道に対する各念書

一、押収してある中央店関係書類一綴(昭和四七年押第四〇号の一)、法人税確定申告書三通(株式会社文化のもの、同号の二ないし四)、所得税確定申告書(同号の八)

判示第二の事実につき

一、登記官作成の登記簿謄本(文化産業株式会社のもの)

一、大蔵事務官作成の告発書(右会社に関するもの)

一、大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料(文化産業株式会社)」、「タバコリベート収入調査書」(昭和四七年三月一三日付)と題する各書面

一、国税査察官作成の査察事件調査事績報告書(文化産業株式会社に関するもの)

一、大蔵事務官作成の郭周尚、今村清四郎、金崎キン、小笠原寛に対する各質問てん末書

一、伊藤久年作成の大蔵事務官に対する昭和四七年三月一三日付上申書

一、押収してある法人税確定申告書三通(文化産業株式会社のもの、昭和四七年押第四〇号の五ないし七)

(法令の適用)

一、被告人朴碩道について

判示各所為はいずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するので所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処理すべきところ、本件犯行の態様、ほ脱金額のほか同被告人が自己の非を認めて反省していること等諸搬の事情を考慮し、同被告人を懲役一〇月に処し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。

二、被告会社株式会社文化について

判示第一の各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告会社を罰金五〇〇万円に処することとする。

三、被告会社文化産業株式会社について

判事第二の各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告会社を罰金三〇〇万円に処することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊沢行夫 裁判官 宮良充通 裁判官 赤木明天)

右は謄本である

昭和四七年一一月三一日

前同庁

裁判所書記官 桜井欣二

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